コーヒーブレイク 資格取得で、人生の選択肢が拡大!?

大学では原子力工学を専攻して修士号まで取得しましたが、結局、大学に入る前から好きだった「数学と勝負事」を優先して、1989年に(当時の)住友信託銀行に入社しました。

信託銀行で数学を使う仕事の筆頭が企業年金のアクチュアリー業務でしたが、採用面談のときにどんな話をしていても、今でいう「配属ガチャ」は、そういう言葉もないぐらい当たり前の時代でした。内定時に「配属先がどうなるかは分からないが、内定期間中にアクチュアリー試験を受験して1科目でも合格したら、これまでは例外なく年金数理部署に配属されている」という話を耳にしました。

私にとっての「数学と勝負事」は、信託銀行の業務では「年金数理と資産運用」でしたが、アクチュアリー試験は数学科目の比重が高く30歳を越えればどんどん合格が厳しくなるとも聞いていました。

そこで、最初は「年金数理」だなと思い、修士論文の実験の合間を縫って数学科目に的を絞って受験したところ、何とか内定時に1科目、合格することができました。

そのためかどうか今となっては確認のしようもないですが、年金信託部数理課に配属され、入社後の5年間は業務に加えて、アクチュアリーと証券アナリストの資格取得に励みました。

入社以来、10年近く年金数理関係の仕事に従事し、もう1つの希望(資産運用)の業務に就きたいと考え始めた頃、タイミングよく業界に先駆けて「業務公募制度」が始まっていました。1998年に業務公募に応募しようと考え、そのことを妻に話したときのことを、よく覚えています。

1998年というと日本長期信用銀行との統合話が、連日、報道されている時期でした。妻のコメントは「合併話があるのに部署を変わって大丈夫なの? 年金数理は信託銀行の専門分野だけど、資産運用の部署は先方にもきっとあるよ。人員が余る部署に行ったら、真っ先に余剰人員になるのでは?」という極めて冷静なものでした。

それでも最終的には「金融業界は厳しいし、クビになるかもしれないけれど、アクチュアリーと証券アナリストの資格があると路頭に迷うことはないらしい」というザックリとした理由で応募することとなり、1999年4月に念願がかなって資産運用部署に異動できました。

このように振り返ってみますと、瞬発力が必要なことも稀にありますが、5年・10年先ぐらいを見据えて、無理せず焦らずコツコツと自分自身に「知識や資格」の“積立投資”をしておいたことが、人生の選択肢を広げることにつながったのかなと、今になって感じています。

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第2回では、「お金を借りる」こと、そして多くの人にとって人生最大の買い物となる「家の購入」を金融資産に変換することという、2つの「人生の選択肢を広げるための手段」を見ていきます(7月30日公開予定)。

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