幼なじみが実家の買い取りを希望

幼なじみは都内で器や箸などを扱う雑貨店を経営していて、自身も陶芸家なのだそうです。隣家の裏山を利用した登り窯の造成を考えているらしく、同時に家も本格的な陶芸施設に建て替え、販売や見学、陶芸体験もできるようにしたいという計画を話してくれました。ただ、ショップや駐車場などを確保するには広さが足りず、空き家になっている私の実家を買い取ることを思いついたようでした。

それは私にとっても渡りに舟の提案でした。

父が亡くなった後は、私宛てに実家の固定資産税の請求書が届くようになっていました。自宅マンションに比べれば大した額ではないのですが、このまま住んでもいないのに実家の税金を払い続けなければならないのかと思うと気が重くなりました。

それだけではありません。火事の原因になったり鳥獣のすみかになったりすると集落の人に迷惑がかかりますから、父が亡くなった後も何度か実家の様子を見に帰りました。コロナ明けで仕事が立て込み、なかなか休みも取れない中でそれだけのために帰郷するのは結構な負担です。妻はNPO(非営利団体)法人などの空き家管理サービスの利用を勧めますが、空き家とはいえ、見ず知らずの人に勝手に家に出入りされるのは抵抗がありました。

一方で国の放置空き家対策は年々厳しくなっており、昭和中期の建築で人が住まなくなった実家は正直、いつ「特定空き家」やその手前の「管理不全空き家」に指定されて行政指導を受けてもおかしくないように思えました。

幼なじみは「上物は壊さなくていい」「点検も必要だろうから引き渡しは1年後くらいで構わない」と言い、ビジネスなので私が良ければ地元の不動産会社を通して適正価格で取引したいと打診してきました。それは、私にとっても願ったりかなったりでした。ただ、いざ売却するとなると不安もありました。実家の登記の問題です。