衝動を止められず、自宅には段ボールが山積みに……

初めて見るインターネット通販サイトに田中さんは衝撃を覚えた。

「通販番組なんかよりもよっぽど楽しい!」

後に田中さんはこの時の衝撃について全身に電流が走ったと語っている。文房具から家電製品、園芸用品から化粧品まで。ありとあらゆるものがそこには販売されており、ちょっと調べるだけで類似商品がいくつも出てくる。気になる商品が出てきてもすぐに、かつ、簡単に探せる。テレビでの通販番組でしか自宅で商品を見たことのなかった田中さんにとってこれは衝撃だった。

商品を誰かが実演することはない。しかし、いくつもの商品を自身で自由に見比べることができる。それに商品の概要や価格など必要な全てはサイト内に詳しく画像付きで記載されている。

通販番組では「あれは見るもの」と言い聞かせていた田中さんの理性が壊れるまでにそう時間はかからなかった。気付けばあれやこれやと商品を購入。

「この包丁は3000円だから安いしいいか!」

「3万円の家電製品が20%オフで2万4000円⁉」

安いからいいや、セールしているからお得だ。何かと理由をつけてどんどん商品を購入。気付けば毎日のように宅配されてくる商品を受け取るようになる。月の支払額が10万を超えることも珍しくはない。息子である剛さん(40歳・男性)が田中さんの“買い物中毒”に気付いたのはそのタイミングだ。

ある日息子の剛さんがたまたま田中さんの自宅を訪れた。理由はたわいもないもので、田中さんが毎年漬けている梅干しのおすそ分けを受け取りに行くというものだ。

そこで剛さんは気付く。今まで見なかったような段ボールの山に。見れば某大手通販サイトのロゴが入っているものも含まれている。部屋を見れば真新しい家電や雑貨をはじめさまざまなものが増えている。

「母さん、この段ボールは何?」全てを察した剛さんが今までにないほど強い口調で、それでもなお、必死に怒りを抑えて問いかける。

●その後、親子は助けを求めて行政書士事務所へ相談に訪れます。2人が頼みの綱にしていたのは何だったのでしょうか? 後編【ネット通販の“爆買い”で老後資金を切り崩した高齢女性…最後の切り札が使えず迎えた「寂しすぎる結末」】で詳説します。

※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
※登場人物はすべて仮名です。