状況を改善するため実家を売却
幸い、母には長い年月を過ごした実家への執着はそれほどなさそうでした。砂沢さんも交えて今後について相談した結果、当面は私の家に同居し、自宅の売却資金を元手に武蔵野市の高齢者マンションを探すことになりました。
母は転勤族の私を頼るより、知人や行きつけの病院、商店街などがある地元での安定した暮らしを望んだのです。実家は現時点で2億円以上の資産価値があるとのことでした。
実際に引っ越しが決まると、引っ越し業者や片付け業者、不動産屋に至るまで、一切合切を砂沢さんが手配してくれました。引っ越しの当日には仕事の合間を縫って駆けつけてもくれました。
私の家で母の荷物を待つ間、砂沢さんは日本の年金制度について、「ネットでボロくそに言われるほどひどい制度ではないけれど、お母様のようなご高齢の寡婦への配慮が足りないといった穴はたくさんある。私たちが声を上げて制度自体を変えていかないといけないんです」と熱く語ってくれました。
聞けば、砂沢さんは会社員時代に社会保険労務士の資格を取って独立し、その後、資産運用の知識の重要性を痛感してFP資格も取得したのだそうです。利用者目線で制度を分析し分かりやすい言葉で教えてくれる砂沢さんに、機会があれば話題の新NISA(少額投資非課税制度)のことも聞いてみたいなと思いました。
ようやく母親に笑顔が戻る
それから半年。武蔵野市の高齢者マンションに移った母は少しふっくらして髪も染め、以前より若返って見えました。最近では好きな映画を見に行ったり、習い事を復活したりして楽しんでいるようです。
驚いたのは喜寿直前にしてパソコンを使い始め、由季と一緒に証券会社に口座を開設しNISAデビューを果たしたことです。どうやら砂沢さんから助言を受けているらしく、私は完全に先を越された格好です。
オンライン通話でも笑顔が絶えない最近の母を見ると、砂沢さんや、砂沢さんとの出会いのきっかけをつくってくれた由季には感謝しかありません。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。