FP砂沢さんのヒアリングで分かった母親の経済状況

ヒアリングを終えた日の夜、砂沢さんから私に電話がありました。砂沢さんは開口一番、「大切なことだから、メールではなくお電話でお伝えしたいと思って」とおっしゃいました。

砂沢さんが訪問した際、母とは初対面とは思えないほど話が弾んだ一方で、母は自分の話になると一転して口をつぐんだそうです。その母の感情が溢れたのが、実家の話になった時でした。

「立派なお家におひとりで住んでいらして寂しくないですか?」

砂沢さんがそう言うと、母は一瞬絶句し、その後、堰(せき)を切ったように語り出したようです。

地価の高騰で年々アップする固定資産税や庭や家屋の手入れの費用、「ガスは危ないから」と私がアドバイスしてオール電化にしたことによる電気代の負担など、この家での生活を維持していくことの大変さを砂沢さんに切々と訴えたのです。

母は親の介護で婚期を逃し、父と結婚するまで年金に未加入でした。その結果、自分の年金額は月4万円ほどで、父の死後は遺族厚生年金と合わせても11万円程度。世帯の年金は父の存命中に比べて半分近くに減ってしまい、家の維持費が大きな負担になっていたようです。

娯楽や食事の費用を抑え、入浴の回数や火を使う料理を減らしてなるべくエアコンもつけない生活を送っていたと聞き、言葉を失いました。

実家の維持と私を米国留学させたことで貯蓄はほとんどないけれど、いざという時に備えて父の死亡保険金は手を着けずにとってあると話したそうです。跡取り息子の私のために、家や父の残したお金を守り抜くことが自分の務めと考えていたのでしょう。先日のやつれた姿が目に浮かび、涙をこらえるのに必死でした。

「国本さんが今後ご実家に戻りたいという希望をお持ちなら話は別ですが、私は、お母様にご自宅の売却をお勧めしたいと思っています」という砂沢さんに、「私も是非そうしてほしいです」と伝えました。

今の部署だと定年までにあと1~2回は海外赴任の可能性があります。その間、母をあの家に縛りつけておくわけにはいかないと思ったのです。