――リスクシナリオについては具体的にどのような想定をしていますか。

景気停滞を予測するメインシナリオとは反対に、アップサイドのリスクも相応にあると考えています。例えば米国経済でインフレが高止まりしているのは、労働市場における需給が非常にタイトな状況が続いており賃金の伸び率が大きいためと考えられるので、しばらく現状の堅調な景気が続く可能性があります。

また欧州経済に目を移すと、経済活動自体はまだ低調であるもののボトムアウトし始めている状況です。

さらにグローバル全体の製造業の動向を示す購買担当者景気指数(PMI)などの先行指標にも底入れした状況がうかがえます。

以上の点を踏まえると、想定よりも全体的に景気が強いという可能性も少なくありません。そもそもメインシナリオとしているソフトランディングは、歴史的に見てかなりレアケースであることも付言しておきます。

――国内外の経済・マーケットを左右するとして注目されている利下げのタイミングやペースについては。

利下げ開始のタイミングは2024年半ばから後半になるのではないかと思います。ペースとしては、米国でも欧州でも足元のマーケットで24年末までに75~100bpsの利下げを織り込んでいると思いますが、われわれの見通しでは、利下げ幅はそれよりも限定的にとどまると予測しています。前述の通り米国の経済活動が相応に強いため、FRBが利下げに踏み切る水準までインフレ率が下がるのが遅れる可能性があるためです。

欧州についても、現在の金利水準を踏まえると、少なくとも24年は米国と同様の利下げペースになると予想しています。

リスクシナリオとしては、当然ながら上にも下にも振れるリスクがあると思います。仮に結局インフレが落ち着いていかないのであれば、利下げ開始がより遅れる可能性がありますし、逆に景気後退が早まれば200~300bpsくらいの利下げも想定できるでしょう。

――中国市場のセンチメントはかなり弱気になっている印象ですが、同国経済の先行きや、日本や世界の経済にもたらす影響をどう見ていますか。

中国の成長自体は鈍化していますが、日本や世界の経済に及ぼす影響はさほど大きくないと考えています。中国のGDP成長率を見てみると2023年が5.2%で、24年も4.5~5%と若干下がる程度に落ち着くというのが当社の見通しです。

ただ、成長の構成要素は様変わりすると思います。2023年はコロナ禍からの回復により消費がそれなりに旺盛にはなりましたが、すでにスローダウンしてきていますので、今後はインフラ投資などの政策の強化によって成長率を下支えすることになるでしょう。成長率が維持できれば日本を含め世界経済への影響は警戒するほどではないと思いますが、かつて中国が果たしてきたグローバル市場における「成長のエンジン」のような役割はもはや期待できないかもしれません。