金融緩和の出口を模索中

日本銀行はいよいよマイナス金利解除を始めとする金融政策正常化を本格化させる見通しです。2023年11月ごろからマイナス金利解除を念頭においた情報発信を繰り返しており、「出口をいい結果につなげることは十分可能」(氷見野副総裁、12月6日)、「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」(植田総裁、12月7日)と正常化に向かう可能性を正面から語っています。さらに12月の金融政策決定会合における主な意見では、一連の政策修正について「巧遅は拙速に如かず」、つまり「早急に着手すべき」という趣旨の記述があり、すでに正常化の具体的な出口を模索していることがうかがえます。

元日に発生した能登半島地震により今は政策修正に動けない状況ですが、私は3月か4月にも日銀はマイナス金利政策を解除すると見ています。そして、2~3年かけて長期金利は上昇していくでしょう。その際日銀は、1998年12月の「運用部ショック」や2003年6月の「VARショック」のような金利ショックが発生しないよう注意を払うと思います。

正常化の第1段階 YCC無効化はすでに完了

もっとも、すでに正常化は始まりつつあります。正常化には、➀長期金利を一定の水準に抑える「イールドカーブ・コントロール(YCC)」の無効化、②マイナス金利政策の解除、と大きく分けて2つのステップがありますが、➀YCCの無効化については昨年10月に実質的に完了しました。10年国債利回りの目標値0%からの変動幅を従来の「±0.5%」から「原則±1.0%」に引き上げ、実際のレートは上限を下回る0.6%程度で変動しながら推移しています。すでにYCCは形骸化し、マーケットメカニズムによってレート形成がなされていると言えます。

次のステップであるマイナス金利政策の解除は着手のタイミングが難しいですが、物価上昇や景気回復により条件は整いつつあります。例えば日銀短観の業況判断DIを見ると業種を問わず改善が目立ち、とりわけコロナ禍で深刻なダメージを受けていた宿泊・飲食サービスの回復は目覚ましいものがあります。小売売上高や自動車販売といった消費も着実に回復してきましたし、インバウンドもかつてのピーク近くまで復活しました。