世界的なリセッションに警戒

最後の5つ目が最も警戒すべき課題で、それは世界的に膨張したマネーストックの行方です。米国のマネーストックの推移(図2)を見てみると、コロナ禍における金融緩和政策などの効果により急増したものの、現在はすでに反転して減少し始めています。米国でマネーストックがシュリンクするのは1960年以降で初めてのことです。また、欧州でもマネーストックは減少に転じました。世界の経済・金融が脅かされる恐れがありますので、今後も継続的にウォッチしておきたいところです。

  図2:米国のマネーストックの推移

 

マネーストックの膨張・破裂が経済を不安に陥れた前例が、今から100年前の大正バブル崩壊です。当時、日銀総裁を務めた井上準之助は「根拠のない空景気が出てきた」「世界各国通貨が非常に膨張している」と、実体の伴わない好景気と膨張したマネーの影響を指摘しています。実際、大正バブル崩壊後はわずか半年で東京株式取引所指数が52.5%下落するなど、市場・経済は大混乱に陥りました。

これから米国、そして世界経済が大正バブルの頃と同じような道をたどれば、日本の景気や物価に大きな影響が及ぶでしょう。今年の金融市場を左右する重要キーワードとして、マネーストックも注視したいところです。