インフレ率はすでにピーク…日銀の目指す「賃金・物価の好循環」は起こらない

日銀は生計費の上昇が賃上げ圧力を生むとする「物価・賃金の好循環」を金融政策の重要キーワードとして掲げていますが、私には違和感があります。というのも、物価と賃金は簡単に相乗的に上がっていくものではないからです。物価・賃金の名目値を高い水準で維持するには経済そのものを強くする必要がありますし、底流には「経済が成長する力」「企業が稼ぐ力」などの実質的な改善が欠かせません。

そもそも、物価・賃金の好循環を実現するための大前提である国内の物価上昇率はピークに達しつつあります。世界的にインフレ率下がっていく見通しとなっており、日本も例外ではないからです。実際、2023年11月の東京都区部消費者物価指数はかなり下振れました。電力やガソリンといったエネルギー価格が落ち着いてきたことに加え、物価を大きく押し上げていた食料品価格の値上げの動きに急速にブレーキがかかってきたことが背景にあるでしょう。また、2024年初頭には消費者物価指数の伸び率が2%強まで下がり、23年初頭(4.2%)から1年間でほぼ半分に急低下する見込みです。

※ 第1回(いよいよ終わる物価高騰―経済腰折れリスクが顕在化し始めている中国と米国はこの先どうなるのか)ご参照

物価上昇が落ち着いたからといってすぐに国内の景気が悪くなるような事態にはならないでしょうが、すでに経済見通しに慎重な見方が出ている米国や欧州の影響が徐々に出てくることは避けられないでしょう。