シェアリングサービスにはこんな問題も

加えてもうひとつ問題点を挙げるとすれば、業界団体である一般社団法人シェアリングエコノミー協会が、体よく利用されたという点でしょう。

協会のホームページによると、ネオリバースは2023年6月1日に、「事業者間の交流、情報収集」、「最新のシェアリングエコノミー動向」を加入希望理由として入会したそうです。

いつの時点でこのような犯罪行為を思いついたのかは知りませんが、詐欺師が自分に対する信用を得るために、この手の協会に加盟していることをアピールするのは、よくあるケースです。「協会の認証を取っていますから大丈夫です。信用してください」というように、悪用されてしまう恐れがあるのです。

だからこそ、同協会としては認証マークを出すに際して、申請してきた企業などを慎重に見極める必要があると思うのですが、そもそも同協会は「性善説」にのっとったビジネスの業界団体ですから、加盟希望者をはなから疑っていなかったのかも知れません。

何しろ、協会の認証マークを付与するに際して、「当該企業の事業の継続性などの財務的審査は行っておらず、協会としては、個社のサービスの事業継続を担保すること等は難しいと考えておりました」というくらいなのですから。

「事業の継続性などの財務的審査は行っておらず」では、倒産寸前なのに、適当に数字をいじって、よく見せかけたような事業者にも、簡単に認証マークを渡してしまう恐れがあります。

トケマッチは表向き、シェアリングサービスの形を取っていますが、高級時計を保有している人が、トケマッチというマーケットを介して時計を貸し出し、利回り換算すると決して低くないリターンを受け取るというスキームは、見方によっては時計を媒介させた資産運用のようなものです。

証券会社だって、有価証券の売り手と買い手をつなぐだけですが、実際に証券会社を設立するためには、非常に高いハードルを乗り越えてライセンスを取得しなければなりません。

トケマッチは許認可事業ではありませんが、人の大切な財産を他人に貸し出すための仲介を行っています。そうである以上、途中で事業が中止されれば、今回のようなトラブルが起こることは十分に想像できるでしょう。その点でも、やはり財務内容くらいは、協会としてしっかりチェックするべきでしたし、それをしなかったのは、協会の怠慢以外のなにものでもないと言えます。

参考:一般社団法人シェアリングエコノミー協会「【FAQ】合同会社ネオリバース(サービス名:トケマッチ)への協会の関わり及びこれまでの対応について」