9月21日、岸田首相は訪問先の米ニューヨークで投資家向けに講演を行い、「資産運用特区」の創設を表明しました。資産運用立国に向けた政策のひとつで、日本の資産運用ビジネスを活性化させるため、外資系運用会社が参入しやすい環境整備を行うことをうたっています。

資産運用特区とは?

新聞などで報道されている、資産運用特区の柱を列挙すると、次のようになります。

①海外から優秀な運用者を招くうえで日本語の壁の高さが指摘されているので、英語のみで行政対応が完結できるようにする。
②バックオフィス業務のアウトソーシングを可能にする規制緩和を実施する。
③「運用資金獲得支援プログラム」を整備して新規参入の運用会社を支援する。
④投資家の意見を政策に反映させるため、日米を主体とした「資産運用フォーラム」を立ち上げる。

以上は日本経済新聞(2023年9月22日朝刊)にも詳しく書かれているので、あわせて参考にしてみてください。

課題は日本発の資産運用ベンチャーのための環境作り?

このように、資産運用特区の創設に向けた規制緩和の内容を見ると、日本の資産運用ビジネスを活性化するには海外勢の日本参入が大事だと言っているかのように聞こえます。

たしかに、米国は資産運用ビジネスの本場ですし、イギリス、アイルランド、ルクセンブルグなども金融立国、資産運用立国として広く知られています。こうした海外勢の日本参入を促進することにより、日本の資産運用ビジネスを活性化させたいという考えは分からないではないのですが、日本の資産運用ビジネスを活性化させるために、なぜ海外勢なのか、という点は疑問です。

資産運用特区のニュースが報じられた直後から、複数名の識者も指摘している通り、海外勢の日本参入を促進するための規制緩和を行う以前に、日本の資産運用ベンチャーが参入しやすい環境をどう作るかに注力するべきなのではないか、と思います。