中野晴啓氏の創業に高まる期待

そのための試金石のひとつが、恐らく「なかのアセットマネジメント」の行方でしょう。読者の方もご存じかと思いますが、セゾン投信の会長だった中野晴啓氏は6月28日に任期を終えて退社。先般、なかのアセットマネジメントを設立することを発表しました。

中野氏がセゾン投信を設立した時は、親会社であるクレディセゾンが全額出資。オフィスやスタッフも、すべてクレディセゾンから提供されるという、恵まれた環境のもとでの立ち上げでした。

その中野氏にとって今回の創業は、まさに裸一貫からのスタートになります。すでにオフィスは構えており、スタッフと資本を集めている最中です。この試みが成功すれば、日本の資産運用ベンチャーが後に続く可能性が高まってきます。

振り返ると、日本において「独立系」、「直販系」と呼ばれる投資信託会社の発端となったのは、さわかみ投信でした。その後、セゾン投信やレオス・キャピタルワークス、コモンズ投信、鎌倉投信などが相次いで設立されましたが、どこの金融機関の系列でもなく、投資信託会社のライセンスを取得して資産運用ビジネスに参入した会社は、鎌倉投信以降、1社も出てきていません。これが日本の資産運用ベンチャーの現実です。

このように、日本発の資産運用ベンチャーがなかなか輩出されない一方、だから海外勢を日本に呼び込むために資産運用特区を創設するというのは、いささか安易な印象を受けます。事実、そのような特区を創設しなくても、日本で個人が購入できる投資信託を設定・運用している外資系投資信託会社は、かなりの数にのぼっています。

日本の資産運用ビジネスを盛り上げるうえで大事なのは、資産運用特区を創設して海外勢を日本に呼び込むことではなく、日本発の資産運用ベンチャーを育成する環境を整えることではないでしょうか。