ニッセイ基礎研究所の「年金ストラテジー(Vol.332)」によると、2023年はETFを除く追加型株式投資信託に6兆7000億円の資金流入があったということです。レポートの結果から、「eMAXIS Slim全世界株式」(オルカン)の安心感の理由と、外国債券投信の資金流入額が倍増した背景を考えます。

外国株式型のインデックスファンドが人気

同レポートに記載されているグラフを見ていただければ一目瞭然ですが、追加型株式投資信託を国内株式型、国内債券型、外国株式型、外国債券型、国内REIT型、外国REIT型、バランス型、その他という8つのタイプに分けて、資金の流出入を比較すると、圧倒的に資金流入額が大きかったのは、外国株式型でした。

これは2023年だけでなく、その前年である2022年も同様であり、ここ数年間で外国株式型が個人の間で人気化していることが分かります。

ただ、同じ外国株式型でも、運用スタイルによって明暗が分かれたようです。アクティブ型は4000億円の流入となりましたが、2022年は1兆5000億円の流入だったので、明らかにブレーキがかかっています。

対して、同じ外国株式型でもインデックス型は、3兆5000億円の資金流入があり、2022年の3兆2000億円を超えて過去最大になったということです。

この数字からも、株式型投資信託の売れ筋は、外国株式型のインデックスファンドであることが分かります。

「eMAXIS Slim全世界株式」(オルカン)の安心感のワケ

すでにさまざまなところで報じられていますが、三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用する「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」が目下、個人の人気を集めていて、2月5日時点の純資産総額は2兆3632億円に達しました。

極めて低い信託報酬率と、このファンド1本で世界中の株式市場に分散投資できる手軽さが人気の秘訣ともいえるでしょう。

もちろんアクティブ型でも、世界中の株式市場に分散投資するタイプのファンドは運用されていますが、運用者の運用能力の優劣によって、運用成績に差が生じる傾向があります。

一方、インデックス型は、運用成績を株価インデックスという平均値に連動させる前提でポートフォリオを組んでいますから、たとえば「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」への連動を目標にしてポートフォリオを構築するインデックス型ファンドが複数あったとしても、その運用成績に、目くじらを立てるほどの差は生じないはずです。

「どれを選んでも、運用成績はほぼ同じ」という特性は、特にこれから投資信託で資産形成をしていこうと考えている人にとっては、絶大な安心感につながります。

今年に入って新NISAがスタートした時点で、前出の「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」に多額の資金流入が生じたのは、まさにこの安心感があったからと考えられます。

とはいえ、この安心感をうのみにしてはいけません。確かに、全世界に平均的に分散投資しているイメージのある、全世界投資のインデックスファンドですが、前出の「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」は、約60%が米国株式で占められています。

これは、世界の株式市場の時価総額における、米国株式市場の時価総額比率に合わせたポートフォリオ比率なのですが、その分だけ米国株式市場の動向に、運用成績が左右されることに留意する必要はあるでしょう。