隆盛するFX、レバレッジ400倍で投資家にアピール

1998年の改正外為法で外国為替取引が自由化されたことで始まった「FX(外国為替証拠金取引)」は、2007年に金融先物取引法が金融商品取引法に統合されたことによって、名実ともに一般の金融取引の1つに認められたという意識が高まっていた。FX取引について証券会社でも取り扱いの検討が始まり、FX取引の専業事業者の間では、他の金融事業者が本格的に参入してくる前に、顧客を増やして競合に勝ち残ろうという意識が強く働いていた。このため、当初は証拠金に対して100倍の取引を提供する「レバレッジ100倍」の取引から「レバレッジ200倍」、「レバレッジ400倍」とより大きな倍率で取引できるサービスを提供することによって顧客をひきつけようとしていた。

レバレッジ400倍の取引では、証拠金10万円で4000万円分の取引が可能になる。たとえば、1ドル=120円が120円30銭に30銭動けば12万円の差損益が出る。損失になった場合は、10万円の証拠金がマイナス2万円になってしまう。為替市場で20銭~30銭の値動きが一瞬で起こることもあるため、10万円の証拠金が瞬間的に消滅したり、あるいは、倍増したりということが起こってしまう。2000年代前半の米ドル・円相場は、2004年11月終値の1ドル=103円17銭から、2007年6月終値の123円48銭まで緩やかな円安・ドル高が続いていた。この流れにのってFX市場で大きな利益をあげる個人投資家が続出し、参入者が相次いだことで市場の変動にも影響を与えていた。そこで、市場関係者の間では、「日本の主婦のようなアマチュア投資家が為替相場の動きに影響を与えている」という驚きを込めて「ミセス・ワタナベ」、「キモノ・トレーダー」などという通称で、日本の個人トレーダーを呼称するようになっていた。