リーマン・ショックの損失を挽回したいミセス・ワタベの決断

麻衣は、渡部夫人を「ミセス・ワタナベ」になぞらえて、「ミセス・ワタベ」と呼んだりしていたが、「渡部さんに聞くと、これまで10万円程度の証拠金で米ドルと豪ドルを売ったり買ったりしていたらしいのだけど、平均した勝率は8勝2敗くらいで、結果的に10万円の証拠金が半年で50万円近くにふえたらしいの。だから、10万円の証拠金を100万円にすれば500万円が作れて、1,000万円の証拠金にすれば5000万円が作れるはずだというのよ。株式投資で損した分をすぐに取り返してやるって言って、もう、私の注意なんて聞く耳を持ってくれないんだから」と深いため息をついた。「4000万円も引き出されて、この穴埋めをどうしたらいいのよ……」。

久美子が引き出した資金は4000万円を少し超えていた。もともと父親の口座を引き継いだ時には1億円近い評価額だったものが、リーマン・ショックによって5000万円以上のマイナス評価になってしまっていた。今回、この持ち株を全部売却して現金化したために5000万円超が評価損ではなく、損失として確定したことになった。久美子は、4000万円を元手にFXの投資で5000万円の損失を取り戻すと息巻いていたという。もし、4000万円を証拠金にレバレッジ400倍で目いっぱい投資したら、160億円のポジションが取れる計算になる。160億円を使って5000万円の利益をあげることは、さほど難しくないように思える、はたして……。

久美子のFX投資は成功となるか? 後編欧米の投資家による“ミセス・ワタナベ狩り”の被害者が損失を挽回できた方法とは?にて、詳細をお届けします。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。