運命の再会
仕事を終えた大原は「ナチュラルウインド」というバーに向かう。
雰囲気はなかなか良いし、なによりも同い年のマスターと話すのが面白く、週に一度は店へ足を運び、酒を飲みながらマスターや常連客との会話を楽しんでいる。
「いらっしゃい」
マスターが笑顔であいさつしてくれる。
まだ時間が早いせいか、店内にはほとんど客がおらず、ひとりの女性客がカウンターに座ってウイスキーを飲んでいるのが目についた。
大原は思わず息をのむ。
カウンターに座っている女性客は、智子だった。
なぜ、この店に智子がいるのだろう。大原はわけが分からなかった。
最初は別人かと思ったが、間違いなく智子だ。たしかにSNSで帰省していると投稿していたが、とっくに東京に帰っていると思っていた。
「あれ? もしかして大原くん?」
大原を見つけた智子は、人懐っこい笑顔でそう言った。白くて小さな可愛らしい歯が唇のあいだから見えた。
「そうだよ。若宮さんだよね? いつもSNSで見てるけど、会うのは高校以来だよね」
「やっぱり大原君だ! ねえ、隣に座りなよ」
大原の鼓動は一気に速くなった。
高校時代に憧れていた智子の隣に座れるなんて。緊張を悟られないように、ゆっくりと智子の隣に座った。
「けっこうお酒好きなの?」
「うん! お酒大好きだよ!」
酒の力もあって、大原と智子の話は大いに盛り上がった。
そして、智子が離婚したということを知った。夫の仕事が非常に忙しく、なかなか2人の時間が取れなかったのが原因だという。
「楽しい! こんなにたくさん話すの久しぶりだよ」
智子はそう言って甘えるような表情を浮かべた。
その姿を見た大原は、智子を自分のものにしたいと強く思った。
●その時の大原には智子の「正体」が見抜けていなかった。 後編【半年で消えた「なけなしの貯金」300万… 憧れの同級生の“ヤバすぎた”正体】にて、詳細をお届けします。
※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。