<前編のあらすじ>

昔からあまり女性に縁がなかった大原(40歳)は、地元の大学から地元の食品メーカーへ就職したが薄給のため一人暮らしもできず、いわゆる「子ども部屋おじさん」になっていた。そんな折、高校時代の同級生でアイドル的な人気があり、大原の憧れの人でもあった智子と偶然バーで再会を果たした。

●前編:彼女イナイ歴20年、婚活もダメだった40代の「こどおじ」を一念発起させた劇的な出会い

智子の正体

大原が智子と付き合うようになったのは「ナチュラルウインド」で高校以来の再会を果たしてから、1カ月後のことだった。

智子は毎週水曜日に必ず「ナチュラルウインド」に来ているということだったので、大原もそれに合わせて店に行くようになった。店に行くたび、大原は智子に酒をおごり、会話を楽しんだ。

そんなことを何回か繰り返しているうちに、大原は勇気を出して智子に告白することを決めた。

「あのさ、俺と付き合ってくれないかな」

大原のストレートな告白を智子は笑顔で受け入れてくれた。

そこからは夢のような日々が始まった。

大原と智子は、まるで青春時代に戻ったかのようなデートを楽しんだ。映画を見に行ったり、買い物をしたり、地元の海岸で一緒に夕日を見たりした。

そして、デートのたびに身体を重ねた。

智子はコミュニケーション能力にもたけており、会話をリードしてくれることも少なくなかった。

しかし、困ったことがあった。

智子はとにかく高いものを欲しがるのだった。食事をするなら高級レストランに行きたがるので、デートをするたびに数万円の出費になった。

「付き合ってから1カ月の記念日だよ」

と言って智子が大原にネクタイピンをプレゼントしてくれたことがあった。

智子からのプレゼントに感激した大原が「智子さんにも何かプレゼントするよ」と言った途端に目の色が変わった。

そして、20万円近くするアウターをねだられた。

さすがに高過ぎるだろうと思ったが、智子に嫌われたくなかった大原は貯金を切り崩してそのアウターをプレゼントした。智子と付き合ってから半年もたっていなかったが、大原は智子のために300万円以上使ってしまった。

薄給からコツコツとためていた貯金はどんどんなくなっていった。激減した預金残高を目にして、さすがに智子への愛も冷めてしまった。

そして、大原は智子に別れを切り出した。

告白を受け入れてくれたときと同じような優しい笑顔を浮かべながら「そっか、悲しいけど仕方ないよね」と智子は別れることに同意してくれた。

悲しいのは大原も同じだった。

まさか智子がここまで金遣いの荒い人間だとは思わなかったし、智子にねだられるままにお金を出してしまうほど自分は女性に飢えていたというのが恥ずかしかった。

なにか言われるのが嫌で、智子と付き合っていることを両親に伝えていないことだけが救いだった。

久しぶりにできた彼女に夢中になり、半年で300万円も使ってしまった挙げ句に別れたなんて親が知ったら、なにを言われるか分からない。