市から届いた返済通知
その日も勇司は大して疲れもなく、家に帰る。
真っ暗な家、リビングの電気をつけると、そこには背中を丸めてテーブルに座る皐月の姿があった。
「ど、どうしたんだよ? 」
「……あなた、これは何? 」
テーブルには封筒が置かれている。勇司はそれを確認して、がくぜんとした。
それは市役所から送られてきた返済の通知書だ。
実は開業をする際に、皐月に黙って借金をしていた。もちろん借金といっても市が募集していた商業向けの融資制度で、金利も安い。
(そうか、もうあれから3年たったのか……)
市の商業向け融資制度は、希望すれば返済を3年間待ってくれる。つまりこの通知書が届いているということは、開業から3年もの月日がたったことを意味している。
「ねえ、どういうこと!? ちゃんと説明してよ! 」
皐月は鋭い視線と声を勇司へ向けた。
返済額は毎月15万円。わが家からしてみれば致命傷となる額だ。
そこで勇司は全てを正直に打ち明けた。
話を聞いた妻は静かに涙を流す。
「借金をしたことじゃない。私はそれを隠されていたことが悲しいの……」
そう言った皐月に勇司はただ謝ることしかできなかった。