工場への配置転換

仕事を終えて家に帰れば、ひたすら勉強した。なんとか工作機械について詳しくなり、営業としてまともに働きたかった。しかし、いくら勉強して知識を吸収しても、その知識同士が結びついてくれない。決して結びつかない知識は安藤の頭の中を漂い、やがて消えてしまうのだった。

ある日、安藤は小川に呼ばれた。きっとまた工作機械をお客さんの会社に運ぶ仕事を頼まれるのだろう。そう思って小川のデスクに行くと、デスクの上には作業服が載っていた。これは、同じ敷地内にある工場で働く社員が着ている服だ。

「安藤君、明日から工場で働いてもらうから」

安藤は思わず耳を疑った。工場で働くとはどういうことだ? 自分は営業職としてこの会社に入社したはずだが。

「正直、今の安藤君の知識量だと営業の仕事はお願い出来ないのだよね。だから、まずは工場で工作機械の製造をやってもらって、しっかりと知識を身につけてほしい」

小川はそう言って、作業服を安藤に手渡した。自分が工場で働くというのはもう会社の会社としての決定事項なのだと安藤は悟った。小川の言い方はとても丁寧で静かだったが、絶対に逆らえないような威厳があった。

「分かりました」

安藤は作業服を受け取った。生地は意外と柔らかく、肌触りも良さそうだった。自分は明日からこの服を着て、工作機械の工場で働くのだ。働いているうちに、きっと必要な知識を身に着けられるだろう。そして、近いうちに営業に戻れるはずだ。