<前編のあらすじ>
映見(40歳)は、半年前に会社が倒産して無職となり家でゴロゴロしてばかりいる夫(40歳)にいらだっていた。夫に文句を言う代わりに、「ノージョブ夫の飼育日記」というSNSアカウントを立ち上げ、毎日のようにネット上に感情を吐露していた。

●前編:夫の悪口に「いいね!」がつく快感から抜け出せなくなった妻のやめられない“共感依存”

突然崩れた日常

せっかくの休日なのに予定がない。本当は学生時代の友人と映画を見に行く予定だったのだが、友人が体調を崩してしまいキャンセルになった。ということで、大切な休日を家で夫と過ごす羽目になってしまった。夫が無職になってから、一緒に過ごす休日がストレスになった。以前はこうではなかった。休日は共働きの夫婦が一緒の時間をたっぷりと過ごせる貴重な機会だったから、買い物をしたり旅行に出掛けたりと、楽しい時間を過ごしていた。

「1日中こいつと一緒にいるぐらいなら、1人で映画を見に行けば良かった」

映見がリビングでそんなことを考えながらソファに座っていると、部屋にいた夫がやってきた。どうせ時間を持て余して昼寝でもしていたんだろう。仕事もせずにのんびり家にいるんだから、毎日が休日みたいなものだよね。

「今、ちょっといいかな」

いつものような気の抜けた声ではなかった。これは、真面目な話をする時の夫の声だった。そんな声、久しく聞いていなかった。もしかして、ついに再就職先が決まったのだろうか。

「うん、いいよ」

映見がそう言うと、夫はポケットからスマホを取り出し、それを映見に突きつけた。スマホの画面には「ノージョブ夫の飼育日記」の文字が浮かんでいた。

「飼育されてる身でこんなこと言うのは生意気だけど、これあなただよね?」

映見は何も言い返すことができなかった。あのアカウントが夫にバレるということは全く想定していなかった。夫はSNSなどに疎く、映見が仕事でSNSを使うと話した時も「俺には絶対無理だな~」と言っていた。そんな夫がどうして「ノージョブ夫の飼育日記」に気付いてしまったのか。