瑠衣からのメッセージ

けっきょく冬美は離婚を突きつけられた。話し合いの余地はなく、一方的な結末だった。きっと元から家に居場所なんてなかった。これから夫と息子は、冬美がいなくとも2人でそれなりにうまくやっていくのだろう。

借金については夫が全額肩代わりをしてくれた。寂しい思いをさせた自分にも落ち度があると夫は言っていたが、それが罪悪感ではなく彼のプライドからの行いであることはなんとなく冬美にも分かった。

実家にい続けるのもばつが悪く、冬美は別の街で暮らし始めた。景色は田園都市線沿いの一軒家から郊外にある築25年のアパートへと変わった。スーパーの精肉売り場で試食コーナーのソーセージを焼く日々は、ホストクラブほどの刺激はなくとも悪くない。

あれから瑠衣には会えていなかった。自分の意志で行っていないわけではなく、会いに行くためのお金がなかったのが理由だ。

小さな休憩室の隅に座りながら、コンビニで買った菓子パンを食べる。スマホにメッセージが届いていた。亜紀子だろうか。離婚して以来、ランチの誘いは断り続けている。彼女たちの満ち足りた日々を見せつけられて、平気な顔で笑っていることはできそうにない。

亜紀子からだと思ったメッセージは瑠衣からだった。

『冬美さん、最近会えなくて寂しいよ。またお店で待ってるから』

胸のうちに幾夜の熱がよみがえる気がした。

瑠衣が褒めてくれた指で、冬美はスマホをタップした。

※複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。