<前編のあらすじ>

富裕層とまではいかないが、裕福な家庭で専業主婦をしている冬美は退屈で単調な日々を送っていた。ある日、学生時代の友人・亜紀子に誘われて人生初のホストクラブへ行くことに。そこで出会ったホスト・瑠衣といると、冬美は忘れていた幸せを感じるようになっていた。

●前編:営業とわかっていても… 疲れ果てた40代専業主婦を癒した「運命のホスト」との出会い

瑠衣との至福の時間

積み上げられたグラスに琥珀(こはく)色のシャンパンが注がれる。歓声とコールが響く。瑠衣は掲げたグラスの中身を一気に飲み干し、冬美にとびきりの笑顔を向ける。たったそれだけで、冬美の胸には心地よい熱が広がる。

盛り上がる店内の合間を縫って、瑠衣が隣に戻ってくる。

「ありがとう、冬美さん」

冬美の肩に瑠衣の腕が回された。思いのほか筋肉質で引き締まっている瑠衣の身体に、冬美は寄りかかる。店内はシャンパンタワーに湧いている。その中心にいるのは、他でもない冬美だ。

「ね、瑠衣。今日はね、プレゼントがあるの。先月、すごく頑張ってお店のランキングもよかったでしょ? だからそのお祝い」

「え、うれしい。開けてもいい?」

冬美は瑠衣に上品にラッピングされた手のひら大の箱を渡す。瑠衣が箱を開けると、中にはオメガの腕時計が入っている。

「うわぁ」

クールな瑠衣がクリスマスの朝を迎えた少年みたいに笑顔になる。いや、ぴかぴかと銀色に光る腕時計をつけながらはしゃいでいる瑠衣は少年そのものだ。

「いいの? でもこれ高かったんじゃない? 今日だってシャンパンタワー入れてもらってるし」

「いいの。いつもこうやって一緒に過ごせることのお礼でもあるんだから」

「ありがとう。でもさ、俺だって冬美さんがこうやってお店に来てくれるだけでうれしいんだ。だから無理はしないで」

瑠衣が冬美の頭をなでてくれる。