長寿化で拡がる「人生の可能性」と「必要となる備え」
金融リテラシーの必要性が高まってきている背景として、日本の長寿化があげられます。
国連人口基金(UNFPA)が発表した2022年版の世界人口白書によると、平均寿命が最も長い国は日本となっています(男女とも1位。ただし複数国あり)。足元の統計データでは日本の平均寿命は男性81.6歳、女性が87.7歳であり、現状は「人生85年時代」というところですが、「人生100年時代」に向かって進んでいる、世界のトップランナーであることは間違いありません【図表1】。
(出所)1970年:厚生労働省「完全生命表」、2020年:厚生労働省「簡易生命表」、2060年:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」の出生中位・死亡中位仮定による推計結果
では、人生85年時代から100年時代へと移行していく中で、個人にとってどのような変化が生じてくるのでしょうか。
ポイントは、長寿化によって拡がる「人生の可能性」と「必要となる備え」です。今から半世紀前(1970年)の日本の平均寿命は男性が69.3歳、女性が74.7歳でした。当時の定年年齢はおおよそ55歳でしたので、リタイア後の老後生活期間は、男性の場合、平均で15年弱でした。公的年金の支給開始年齢も60歳からでしたので、「55歳でリタイア、5年は自助で生活、60歳から 約10年、国の年金で生活」といったライフプラン(人生設計)だったと想定されます。
しかし現在では長寿化の進展によって、これまで以上に「挑戦したいこと」「続けたいこと」「実現したいこと」の選択肢が増え、可能性が拡がる一方で、「60~65歳でリタイア、65歳から国の年金支給開始を前提に20年弱の老後生活期間に備える」イメージに変わりつつあります。
ですから、今後の生活をより一層充実したものにするには、現在の生活の充実とともに、10年後、20年後、そして、もう少し長めの視点を持って、仕事・家庭・自分などを含めた人生設計=「ライフプラン」を考えていくことが大切になります。
また、ライフイベントには「お金・予算」の準備が必要なものが、かなりあります。それぞれのイベントを自分が思い描いたものに近づけていくために、早いうちから各イベントに取り組むための費用をイメージ(=「マネープラン」)し、その準備をしていくこと(=「資産形成」)が重要です。
お金の置き場所を考えてみる
「資産形成」を行うにあたっては、自身の「収入」と「支出」を把握し適切に管理していくことが重要です。適切な収支管理を行うことで、毎月どの程度、金融資産を形成していけるかの見通しを立てることができます。その見通した金額とライフプラン・マネープランを照らし合わせて、積み立てるお金をどこに置いておくかということを考えることが次のステップです。
お金の置き場所は、大きく分けて「貯蓄」と「投資」があり、その二つの違いを理解しておく必要があります。
「貯蓄」は「貯めて、蓄えること」であり、金融機関に預金や貯金をしてお金を蓄えておくことです。預入れた元本が減らないという確実性(元本保証)があり、基本的にはいつでも自由に引き出せるお金の置き方です。さらに預入れた対価として、利息を受け取ることができます。ただし、2023年の日本においては低金利政策の影響で預貯金の利率は非常に低く設定されているため、得られる金利は極めて少なくなっています。
「投資」は預金のようにお金をお金のまま置いておくのではなく、「お金と異なる資産」に形を変えて何らかの経済活動に資金を供給し、その成長の結果生み出された収益の一部を利益として受け取るという「お金の置き方」のことです。例えば、株式に投資をした場合、投資した会社が成長を続けていけば、短期的な下落局面はあったとしても長期的には株価が値上がりしていくと想定されます。このように期待値がプラスになると想定されるものにお金を振り向けていくのが「投資」の基本といえます。
●第2回【「投資は大変で難しいもの」は誤解! 世界経済の成長とともにお金を育てる方法】では、長期的に見て、なぜ世界株式への投資がメリットが大きいのかを解説します。
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