退職金は、会社を退職するときにもらえるお金です。企業年金も、原則60歳以降に受け取れるものです。もしも、退職金や企業年金をもらう前に亡くなってしまったら、これらの給付はどうなってしまうのでしょうか? また、退職金や企業年金を将来もらう予定の人が離婚した場合は、財産分与にどう影響するのでしょうか?

今回は、退職金や企業年金が「もしも」のときにどうなるのかを調べてみました。

退職金や企業年金をもらう前に亡くなるとどうなる?

退職金は、長く勤めた人への慰労金やご褒美ではありません。「労働の対価として支払われる賃金の後払い」という性格のお金です。労働者が働いて稼いだ賃金の一部ですから、本人が退職する前に亡くなったからといって、消滅することはありません。一般的には、死亡退職金として労働者の相続人が受け取ることになります。

本人が生きている間に受け取る退職金と、本人が亡くなった後で遺族が受け取る死亡退職金で異なる点は、退職金にかかる税金です。

生きている間に、本人が退職金を一括で受け取る場合には、退職所得控除を差し引いた金額の2分の1に所得税がかかります。一方、死亡退職金を相続人が受け取る場合は、所得税はかかりませんが、労働者が亡くなった後3年以内に支払いが確定したものは相続財産とみなされて相続税の対象となります。

ただし、死亡退職金は、全額が相続税の対象になるわけではありません。死亡退職金は、故人がもともと持っていた預貯金や不動産などの財産とは異なり、死亡をきっかけに受け取ることになった財産で「みなし相続財産」という位置づけになります。

「みなし相続財産」の死亡退職金には非課税枠があり、500万円×法定相続人の数が非課税になります。たとえば、労働者が死亡したときに、相続人が配偶者と子ども2人であったとすると、死亡退職金が1500万円以内であれば、相続税の課税対象にはならないということです。