定年や60歳になる前に転職・退職をする人は、辞めた会社で加入していた企業年金をどうしていますか? 「数年で辞めたから金額も少ないしどうしようもない」とか「辞めたらもらえないでしょ」などと思い込んでいませんか?
会社が企業年金として積み立てていたお金は、会社のものではなく、従業員個人の年金資産です。会社を辞めたからと言って消滅するものではありません。「もらえない」と思って放置すると、せっかくの年金資産がどんどん減ってしまいます。今回は、転職・退職時に自分でするべき企業年金の手続きや、放置した場合のデメリットについて調べた結果を報告します。
転職・退職時に知っておきたい「企業年金の行方」
会社員のなかには、転職を経験したことがあるという人も少なからずいるでしょう。では、会社を辞めたとき、辞めた会社で加入していた企業年金をどうしたか、覚えているでしょうか?
企業年金のうち、確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金は、勤務3年以上で中途退職すると、脱退一時金が支給されます。このタイプに加入していた人は、退職時に一時金の支給を受けたかもしれません。わずかでも一時金をもらった人は、それで転職前の企業年金は精算済みになります。
一方、企業型確定拠出年金(DC)は、中途退職をしても、原則として60歳になるまで年金資産を引き出せません。
企業型確定拠出年金(DC)は手続きが必要!
企業型確定拠出年金(DC)の年金資産は、自分で手続きをして、転職先の会社の制度や個人型確定拠出年金(iDeCo)などの他の制度に持ち運ばなければならないのです。企業年金の持ち運び(ポータビリティ)が可能なパターンは、下記の厚生労働省のホームページでご確認ください。
●参考:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」(外部リンク)
上記リンク先の表を見ると、確定給付企業年金(DB)も、退職時に一時金を受け取らず、転職前の会社と転職後の会社の規約によっては、年金資産を新しい勤務先の確定給付企業年金に移すことが制度上は可能になっています。ただし、実施している企業は現在のところあまり多くはないようです。
転職先の会社の制度が企業型確定拠出年金(DC)だったという場合は、DBの脱退一時金を企業型確定拠出年金(DC)に移換できます。転職先に企業年金制度がない場合は、iDeCoや通算企業年金(年金資産を企業年金連合会に移換して、原則65歳以降に終身年金を受け取る制度)に移換する方法があります。
また50歳以上で20年以上勤めた人など、長期勤続者の確定給付企業年金(DB)や厚生年金基金は、元の会社で資産を預かってもらい60歳以降にもらえる場合もあります。この場合は、将来、請求し忘れない限り大事には至りません。