同窓会で人だかりの中心にいた人物とは

ふと気づくと、1人の回りに人だかりができていました。誰かと思ってのぞいてみると、松橋孝也ではありませんか!

松橋は中学から高校にかけて私の子分のような存在で、今思えばいじめに近い無理難題を押し付けていた相手でした。への字眉に前歯が目立つ特徴的な顔つきでいつもちょろちょろしていたことから、つけたあだ名が「ねずみ」です。

輪の中にいる松橋は、生え際こそ少し後退したものの、昔と変わらぬねずみ顔ですぐに分かりました。

「おい、ねずみって有名人なのか?」

隣にいた同級生に尋ねると、「なんだ、お前知らなかったのか」と言って、松橋がカリスマ個人投資家として、株式投資の指南本まで出していることを教えてくれました。ハンドルネームを使い、顔出しもしていなかったので今まで気づかなかったのです。

松崎の取り巻きの中には高校時代気になっていた和泉恵美子の姿も見え、不愉快な気持ちになりました。その日は結局、松崎と話をすることもなくそそくさと会場を後にしたのでした。

後で松崎のブログやYouTubeを見まくり、松崎が株主優待や配当狙いのバリュー株投資でひと財産をなし、自身の投資体験や相場観をつづって多くのフォロワーを得ていることが分かりました。

そうすると、「ねずみごときに負けてたまるか」という思いがむくむくと頭をもたげてきました。とはいえ、私の投資経験と言えば社員持ち株会の自社株と、DC(企業型確定拠出年金)の投資信託くらいです。いつもはスルーしている証券会社の営業職員の勧誘に応じてしまったのも、松崎に対する対抗心がピークに達していたからでしょう。