私が働いている子供食堂の常連さんの1人が、当時小学4年生の瞬太君でした。シングルマザーのお母さんと2人暮らしですが、お母さんは美容外科医をしていて裕福なご家庭らしく、他の子供たちとは身なりや持ち物も全然違います。

しかも、見た目は色白で整った顔立ちなのに、自己チューで粗暴な言動で周囲から孤立していました。やがて他の子供たちの親御さんから苦情が寄せられるようになり、運営側もこのまま放っておけないと、忙しいオーナーに代わって私が瞬太君のお母さんと話をすることになったのです。

●前編:【子供食堂にブランドバッグで現れ…苦情殺到の“傍若無人”な問題児】

母親がまくしたてた身勝手な理論

お母さんが面会場所に指定したのは、勤務先の美容外科の近くのカフェでした。早めに席を取って待っていると、ウェブサイトの写真で見た華やかな雰囲気の女性がやって来ました。忙しいので休憩時間が15分しか取れないと事前に聞いていたので、挨拶もそこそこに本題を切り出すと……。

「要は、瞬太のような子は子供食堂を利用するな、ということですね?」

私の話を遮るようにして、瞬太君のお母さんがきつい口調でまくしたてました。

「児童手当の収入制限だって廃止されたんですよ。子供は社会の宝だからみんなで大事に育てようというのが今の日本のスタンスじゃないですか」

「そもそも、あなたたちは国や自治体から補助金をもらって事業をやっているんでしょう? 補助金は税金です。失礼ながら、私は他の保護者の方よりずっと多くの税金を納めています。その私の子供に利用するなっていうのはおかしな話だと思いませんか?」

「瞬太は偏食がすごくて、学校の給食なんてほとんど手を着けないみたいなんです。その瞬太が、おたくの食事はおいしいと言って毎日通っているのを見てああ良かったなと思っていたんです。それなのに、あなた方の勝手な論理で瞬太の楽しみを奪うんですか?」