60年償還ルールの延長論

政府は60年償還ルールに基づいて、毎年度の予算でおよそ60分の1を返済し、残り60分の59は借換債が発行されます。2023年度の予算案では、このうち年度の返済額が16兆7561億円にのぼりました。

これについて、自民党内などから60年という返済期間を延ばすことで、毎年度ごとの返済額を減らしてはどうかという意見が出ていました。

たとえば償還期間を20年延長して80年とすれば、年度当たりの返済額は60分の1から80分の1に減ります。2023年度を例に取れば、必要な予算は約12兆円に減り、約16兆円と比べおよそ4兆円の資金が捻出できるかに見えます。その分を、防衛費などの必要な予算の財源に充ててはどうかとの意見です。

ただし、返済する額が4兆円減るということは、その分の借換債が増額されるということです。利子の支払いも余計に増えるため、財政は一段と悪化することになりかねず、あまり意味をなさない議論のように思えます。

「60年償還ルールそのものを廃止してはどうか」との意見もありますが、これはこれでハードルそのものが高いうえ、財政規律 ※4を損なうものとなりかねません。

※4 財政運営の健全性を保つため、歳出と歳入の均衡を図ること。

『知っているようで知らない国債のしくみ』

久保田博幸 著
発行所 池田書店
定価 1,870円(税込)