日常生活のなかで国債と直接関わることはあまりないかもしれません。しかし実際、国債は金融市場全体を支えるインフラ。日本経済を理解するのに国債の知識は欠かせません。
話題の書籍『知っているようで知らない国債のしくみ』では、知っているようで知らない国債に関する仕組みや役割について、金融アナリストの久保田博幸氏が解説。今回は本書序章「国債の3つの役割」、第1章「国債の種類」の一部を特別に公開します。(全4回)
●第3回:「特例」という言葉自体も意味をなさない…なぜ毎年度「特例国債」は発行され続けるのか
※本稿は、久保田博幸著『知っているようで知らない国債のしくみ』(池田書店)の一部を再編集したものです。
「60年償還ルール」と借換債
1965年度に戦後初めて発行された国債(特例国債、7年債 ※1)は、その満期が到来した1972年度に全額現金で償還されました。
※1 戦後最初に発行されたのはのちに主体となる「10年債」ではなく「7年債」だった。
そして、1966年度以降に発行された建設国債については、発行時の償還期限にかかわらず、すべて60年かけて償還される仕組みが導入されました。これは公共事業によって建設されたものの平均的な効用発揮期間、つまり使用に耐えられる期間が、おおむね60年と考えられたためです。これが国債の60年償還ルールと呼ばれるものです。
1985年からは建設国債だけでなく特例国債(赤字国債)にも60年償還ルールが適用されることになりました。
借換債は60年償還ルールによる国債の整理または償還のために発行される国債のことです。普通国債(建設国債と赤字国債)については、償還額の一部を返済するための資金を調達する目的で借換債が発行されているのです。
ただし、復興債 ※2の場合は、復興財源とされている復興特別税の税収や株式の売却収入の金額に応じて、借換債の発行を行っています。
※2 東日本大震災からの復旧・復興事業に必要な財源を確保するために発行される国債。