香川さんからの核心を突いたアドバイス

「はじめまして、香川です。メールを拝読してお急ぎのようだったので、お電話を差し上げました。よろしければこの週末にでも一度、オンラインで面談いたします。ご都合のいい時間帯をご指定ください」

耳に心地よく響く低音ボイス、落ち着いた語り口に、「この人は信頼できそうだ」と思いました。その印象は、オンライン面談でも全く変わりませんでした。

私の話をひと通り聞いた後、香川さんは言いました。

「南さん、それは“勇気ある撤退”ですよ。コロナ禍での移住はやむを得ない選択だったと思います。しかし、今は事情が変わってきているわけですし、家族みんなが我慢しながら今の場所にとどまる必要はないのではないでしょうか」

そして、こう続けたのです。

「東京での生活基盤を築く鍵を握るのは、香川さんの仕事です。幸い今、コロナの5類移行でイベントや旅行業界は回復が進み、売り手市場になっています。以前一緒にお仕事をされていた方に声をかけたり、転職サイトに登録してみたりしてはいかがでしょう? 当面のご長男の学費については、正直、それほど心配はないと思います。東京都では私立高校の授業料が実質無償化されていますし、受験に関しても、ご長男の学力なら塾の特待生制度が利用できるかもしれません」

香川さんのアドバイスを家族に伝えると、みんなの表情が緩むのが分かりました。進学の事情を抱える上の息子だけでなく、妻や下の息子も新しい環境で無理を強いられてきて、ようやくそこから解放されることに安堵したのでしょう。