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※前半記事【妻と離婚、高齢両親と同居の52歳営業部長が直面した“過酷すぎる”現実】からの続き

働きながら家族の介護をする「ビジネスケアラー」が増えている

仕事をしながら家族の介護をする人を近年「ビジネスケアラー」と呼びます。介護のために仕事を辞める「介護離職」の防止は重要な政策課題となっていて、厚生労働省のホームページ(※)では労働者向け・事業主向けに、利用できる制度などが紹介されています。

※厚生労働省「仕事と介護の両立 ~介護離職を防ぐために~」

経済産業省の調査研究事業によると、仕事をしながら家族の介護をしているビジネスケアラーは増加しており、2030年には約318万人に上り、経済損失は9.1兆円になると推計されています。介護の心身への負担と、仕事を休むことによる生産性の低下は、個人に対する影響にとどまらず、企業の生産性の低下やコストの増加につながります。介護離職者は約10万人で推移していますが、ビジネスケアラーの数はもっと多く、これからますます企業内での両立支援が重要になるでしょう。

同じ調査研究事業では、ビジネスケアラーにアンケートを取っていますが、男女や職位を問わず、家族の介護を始めてから自分の仕事のパフォーマンスが低下していると感じる人が3割を超えていました。介護離職をした人へのアンケートによると、自身が介護をしていた理由として、女性では「家族の介護は家族が行うのが当然と考えていたから」「他に任せられる人がいなかったから」という回答が多いのに対して、男性では「介護保険サービスの使い方がわからなかったから」という回答が多い傾向がありました。

介護保険制度は40歳以上の国民は加入が義務付けられており、大輔さんも両親も当然保険料を毎月払っていますが、いつどのように使ったらいいのかはこれまで考えたことがなかったようです。