親の急な入院

大輔さん(仮名、52歳)は食品会社で20人の部下を率いる営業部長。元々は医薬品卸の会社にいましたが、30代半ばで現在の会社に転職しました。

30代半ばで離婚した大輔さんは、父(82歳)と母(79歳)と3人暮らしです。遠方に住む25歳の一人息子がいますが、息子が就職した3年前に一度会ったきり、日頃は連絡を取っていません。

大輔さんは離婚して以来ずっと両親と暮らしています。父は元教師、母は専業主婦で、大輔さんたちきょうだい(兄と妹)を育てあげました。父は厳格で、今も図書館に通っては歴史を研究しているようです。

地域の活動に参加するのは主に母です。大輔さんが両親と同居し家事全般を母に任せていることについて、隣県で家庭を持っている妹は「子ども部屋おじさん」と言ってからかいます。兄はまだ独身で、遠方の発電所で技術者として働いています。兄は父に似て無口でやや取っつきにくく、大輔さんは少し苦手です。

ある日の午前中、大輔さんの携帯に知らない番号から電話がかかってきました。出ると、地元の救急病院からで、父が自転車で外出中に車と接触し、転倒してけがを負ったとのことです。すぐに病院に来てほしいと言われましたが、昼過ぎに大事な打ち合わせが入っていて急には行けません。母に連絡しましたが動転していて要領を得ず、家から病院が遠いこともあり、対応は難しそうです。誰も来なければ診察できないと言われてしまったので、なんとか病院と交渉して診察はしてもらい、打ち合わせが終わってから駆け付けることにしました。