公務員の退職金だけが高いわけではない

一般的に公務員の退職金は民間より多いイメージがありますが、金額を見ると、民間企業で退職一時金と企業年金の両方を併用している会社の退職金額とほぼ同水準です。

実は、国家公務員の退職手当は、官民均衡を図るため、おおむね5年ごとに行う民間企業の企業年金及び退職金の実態調査を踏まえて見直しを実施することとされています。そのため、人事院は民間企業の退職金の実態調査を行い、国家公務員の退職金との比較を行っているのです。

そして、2021年度中に退職した人の退職金をもとに人事院が比較した結果は、次のようになっています。

●退職金の官民比較結果

出典:人事院「民間の退職金及び企業年金の実態調査の結果並びに国家公務員の退職給付にかかる人事院の見解の概要」令和4年4月21日
※民間企業は事務・技術関係職の常勤従業員で、令和2年度中に勤続20年以上で退職した事務・技術職種の常勤従業員(大卒・大学院修了)の支給額
※公務員は令和2年度中に勤続20年以上で退職した国家公務員のうち一般行政事務職員(大卒・大学院修了・高卒)の退職手当

人事院が行った調査では、退職一時金と企業年金(使用者拠出分)を合わせた退職金額の平均は、民間が2405万5000円、公務員の退職金額は2407万円でした。公務員のほうが1万5000円(0.06%)上回るという結果になりました。

これを受けて、人事院は公務員の退職給付の取り扱いについて、検討を行うことが適切との見解をまとめています。しかし、結局この年の調査は、ご覧の通り金額に大きな差は出なかったため、「国家公務員の退職手当の水準改定は必要なし」とされました。

このように、公務員の退職金給付水準は、国家公務員退職手当法によって官民調整が入るため、「公務員だけが高い退職金をもらっている」というような不均衡は是正されるしくみになっています。民間の退職金が下がれば、公務員の退職金も減るということです。

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今回は、民間企業と公務員の退職金の相場について解説しましたが、ご紹介したデータは統計のほんの一部です。退職金額は、学歴、勤続年数、業種ごとにまとめられたデータもあります。ご自身の環境に近い平均値を参考にしたい場合、前述した5つの統計をじっくり見てみるのもよいかもしれません。

しかし、過去の支給額を見て「昔は高かったのに……」と嘆いても仕方がありません。また、平均値を知ったとて、自分もその金額がもらえるわけでもありません。これから定年退職を迎える方は、まずは自分の会社の制度や退職金額を調べ、自分に合った受け取り方や、資産形成のプランを立てることから始めましょう。