世界的な金融緩和政策が転換の兆しをみせ、米国の利上げや日銀の出口政策にも注目が集まっています。この数年で揺らぐ金利大変動が移行期を迎えている今こそ、これらのポイントとなる“金利”の意義や仕組みについて改めて知っておきたいところです。
金利について学ぶことは金融の基本であり、金利を糸口にすれば経済を読み解けると説くのが金融アナリストの田渕直也氏。話題の書籍『教養としての「金利」』では、世界経済の新たな構造変化の土台となる金利の基本について解説。今回は本書冒頭の「はじめに」と第1章「金利とは何か」、第2章「金利の計算方法」の一部を特別に公開します。(全4回)
●第2回:地味でも重要な“金利の役割”とは? 経済ニュースで「金利」が取り上げられないシンプルな理由
※本稿は、田渕直也著『教養としての「金利」』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
金利に関するさまざまな決めごと
金利には、さまざまな決めごとがあります。少々煩わしいのですが、どうしても押さえておかなければいけないので、しばらくお付き合いください。
まずは、その表示方法です。金利(利率)は、実際に利息を計算する期間がどのくらいかにかかわらず、1年あたりのパーセント(%)で表示するのが基本です。
これを年率表示といいます。利息を計算するのが1日でも、3カ月でも、10年でも、利率としての金利は年あたりの率で表示するのです。これは、他の取引や他の商品と簡単に比較できるようにするためです。同じ期間あたりに揃えることで、異なる期間の取引や商品であっても、金利の高低を比較することができるようになります。
ちなみに日本では、元本100円、1日あたりの利息額で金利を表す日歩(ひぶ)という表示方法があります。たとえば、「日歩1銭5厘4毛」※1というような言い方をするのです。でも、これではいまやほとんどの人が、金利が高いのか低いのかすら簡単にはわからないでしょう。
※1 ちなみに年率パーセント表示では5.621%になります。
多くの金融取引は比較的取引期間が長いことが多いので、「1日あたり」よりも「年あたり」のほうが実用的でしょうし、とにかく一般的に使われていて、多くの人が馴染んでいる表示方法を使うのがいちばんです。そうした意味では、表示単位についても、日本人ですら馴染みのない銭とか厘などを使うよりもパーセントのほうがしっくりくるはずです。