人口減少社会では“相続してうれしい不動産”の厳選が必要

最後に、人口の話もしなくてはいけませんね。やはりなぜ不動産に価値が出るかというと、利用する人がいるからです。利用する人=人口の問題は大きいです。日本の人口は今後減っていきますが、どれくらいの勢いで減っていくのかは、皆さん意外に知らないと思います。下記は日本の人口推移のグラフです。

出所:国土審議会政策部会長期展望委員会「国土の長期展望」中間とりまとめ

驚くのは、終戦から高度経済成長期の日本の人口の増え方が急激だったということです。ですから家も足りませんでしたし、どんどん住宅を造れという政策にならざるを得なかった。そういう時代がありました。

2004年をピークに人口は減り始めているのですが、寿命も延びているので2022年、23年はまだ山の頂上の方にいます。ただ、さすがにこの後からは、かなりの勢いで減っていきます。

前編でお話しした相続対策でいうと、自分が持っている不動産を子どもに相続させたいという方が弊社にも数多くご相談に来られます。「これがあれば、子どもが食べていける」「この物件は長男に」「この物件は次男に」などと、おっしゃる方もいます。しかし、我々としては「お客さまの生きてきた30年40年と、お子さまが生きていく30年40年では、日本という国のポテンシャルが全く違うんです」というお話をしなくてはいけません。その不動産が本当に必要な不動産なのかどうか。相続してうれしい不動産なのかは、しっかり判断しなければなりません。

もちろん、今のような時期でも持ち続けた方がいい不動産もあります。それもご自身の感覚ではなく、正確な土地価格や適性家賃、人口予測といったデータに基づいて判断された方がいいですね。ご自身での判断が難しい時は専門家の意見も聞いてみるなど、第三者的目線できちんとした評価や分析をもらい、価値のある財産を持ち続けることが大切です。

この連載の目的は、不動産取引における、一般の方とプロとの「情報の非対称性」を少しでも埋めていただくことです。不動産はいつでも「買い時」なのではありません。特に不動産投資は、価格が低い時に買って高い時に売ることが鉄則です。読者の皆さまが、不動産と関りを持つ際に、ぜひ覚えておいていただきたいことや、正しい判断をしていただくために、お役に立つ情報を発信していきたいと考えています。

次回は、「ワンルーム投資はなぜ失敗しやすいのか」についてお届けします。