多くの人に最も関係が深い不動産取引といえば、やはりマイホームの購入です。しかし、ここでも「知っている人」「知らない人」では大きな差がついてしまいます。例えば「変動金利より固定金利がよい」「繰り上げ返済はすればするほどよい」などの“常識”とされている説は本当に正しいのでしょうか。不動産鑑定士の福田伸二さんが、住宅ローンのリテラシー向上に役立つ知識を解説します。

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ペアローンの落とし穴。そのローン本当におトク!?

前編(世帯年収1000万円パワーカップル「この物件を買えば破産」。盲点だった“ある出費”とは)でご紹介したSさんのご相談で、もうひとつ私が気になった点がペアローンを組もうとされていたことです。最近では共働きが増え、ご夫婦でペアローンを組んで住宅を購入する方が増えています。もちろんローン控除などの面では、ペアローンのメリットも大きいのですが、単独でローンを組めるのに、わざわざペアにする必要はないというケースも散見されます。

例えば、住宅ローンを組む時に加入する団体生命信用保険があります。これは借り入れをした方が死亡した場合、ローンの残債を支払わなくてよくなるという内容の保険です。この保険もペアで組むと、例えばご主人が亡くなった場合、奥さまのほうには半分ローンが残ってしまいます。

また、変な話ですが、万が一離婚をした場合も、住宅が共有名義になってしまうので、売却しにくくなるのです。不動産は権利関係が複雑になればなるほど価格が下がってしまうのがセオリーです。ご夫婦の年収にもよりますが、ペアローンにしたほうがトクなのか、単独でローンを組んだほうがトクなのかは、一度よく考えていただきたいと思っています。