居住用、投資用、相続・節税用とさまざまな用途で取引される不動産。しかし、売り手と買い手の情報に「非対称性」があることからも、不動産に関するトラブルが後を絶ちません。この連載では不動産鑑定士の福田伸二さんが、皆さんの「不動産リテラシー向上」に役立つ情報を事例と共にお届けしていきます。今回は気になる「住宅ローン」について解説してもらいます。

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世帯年収1000万円超の夫婦が理想の物件を発見!

前回までは主に投資用の不動産についてご説明しました。今回は、住居用の不動産、つまりマイホームの購入について、気をつけるべきポイントを解説したいと思います。今は共働きの方が多く、ご夫婦で高額の住宅ローンを組む例も増えています。しかし、だからこそ注意したい点もあるのです。

ご相談事例
Sさん(東京都内在住で共働き)
年収:夫婦で年収約1000万円
お子様:1人。4歳で現在保育園に通う

Sさんは都内在住で賃貸暮らし。そろそろマイホームが欲しいと考えていました。ご年収は夫婦で1000万円以上あり、奥さまはご出産後も時短勤務ではあるものの、正社員で働き続けています。お子さまは4歳のお嬢さん。周囲には小学校から私立に行かせたいと「お受験」に躍起になっている家庭もありますが、ご夫婦ともに地方の公立高校から大学へ現役で進学できていたため、「中学まではのんびり公立に行かせたいね」と話していたそうです。

Sさんが希望された物件はご夫婦のご年収にしてはかなり背伸びした価格で約1億円の、いわゆる“億ション”でした。しかし、今後も共働きを続ける前提で、お子さまが成長すれば奥さまの昇給も見込めるため、「がんばればなんとかなる」と思っていました。なにより、交通の便が良く、設備も整っているのが魅力の物件でした。いまの住居からも近いので、お嬢さんのお友達関係も維持できます。

「娘が小学校に入るまでには家を買いたいね」と話していたご夫婦。Sさんはこの条件なら奥さまも大賛成だと思い、早速資料を奥さまに見せました。