鈴木敏郎さん(仮名、65歳)は関東郊外の賃貸マンションに妻と2人暮らし。一人息子は大学卒業後に大手メーカーに就職、結婚して近くのマンションに住んでいます。そんな息子は結婚後10年たっても子どもをもうける気配がなく、鈴木さん夫婦は早く孫の顔が見たいと誕生を切望していました。

願いがかないようやく初孫が誕生すると、鈴木さんは手元の退職金2000万円を孫の教育資金のために使いたいと考えます。金融機関からも相続税対策として「教育資金一括贈与」を提案されていたことから、鈴木さんは非課税限度額の1500万円を一括贈与することに。

息子夫婦も非常に喜んでくれ、孫の役に立てると鈴木さんはとても満たされた気持ちになりました。ところが、これが悲劇の始まりだったのです……。

●突然、息子夫婦が訪ねてきて驚きの一言
※前編【「おじいちゃん、ありがとう」孫のために一大決心、“生きた証”に涙】からの続き

相続対策を考えてみると…

教育資金一括贈与を実行したこともあり、鈴木さんは相続対策に興味を持つようになりました。それほど財産が多い方ではないけれど、それでも相続対策は必要だと周りからも言われます。金額の多寡は問題ではなく、どんな人にも相続対策は必要とのことでした。

鈴木さんが相続対策を調べてみると、ポイントは3つありました。

1.もめない対策
2.納税資金対策
3.節税対策

それぞれを自身に当てはめて考えると、次のようになりました。

1.もめない対策

遺産で家族がもめてしまうリスクへの対応。いわゆる二次相続(例えば父が先に他界し、母がその後に他界した場合など)で子ども同士がもめてしまうケースが一般的には多いが、わが家は妻と息子1人の家庭だから、もめることは想定しづらい。問題ないと判断できそうだ。

2.納税資金対策

相続税負担がある場合、財産を相続した人がわざわざ相続税の納税資金を用意しているケースはまずないとのこと。確かに親の財産をもらった息子が、自分のお金で相続税を払うなんてことは想定しづらい。わが家の相続税はいくらかかるのか、確かめないといけない。

3.節税対策

相続税がかかるなら、少しでも税金を減らしたいとは誰でも思うもの。さまざまな方法があるらしいが、今回の教育資金一括贈与はまさにこれに該当するので、個人的には大満足だ。

おおむね、相続に関してわが家に問題はないと鈴木さんは思いました。ところが、実際に相続税がいくらかかるのかを調べてみると、驚きの事実が発覚したのです。