山下康介さん(仮名、57歳)は、5年前の母の死を契機に高齢の父との同居を開始、妻と共に3人で暮らしています。一人息子(30歳)は既に独立して隣県で1人暮らしをしていました。
山下さんには妹が1人いますが、子供の頃から折り合いが悪く現在も疎遠。そんな妹と父の財産1億円を分け合うことになる前に、山下さんはよかれと思ってある節税対策を施します。
それは「養子縁組」。しかも、自分の妻と息子を父の養子にするという奇策でした。万事がうまくいくと思っていた山下さん。しかし、父の一言がきっかけで状況が一変してしまい……。
●妻と息子が「父の養子」!? なぜ? その事情と経緯とは… 前編はこちら>>
山下さんの犯した大きな失敗
山下さんの妻と息子が父との養子縁組を無事に済ませて1週間ほどたったある日の夕食時、父が食後の緑茶をすすりながら、おもむろに口を開きました。
「それで、結局、康介と春子(山下さんの妹)の2人の手元にはどれくらいの金が残るんだ?」
この言葉に反応したのは山下さんの妻でした。すぐさま、けげんな表情で「2人? どういうこと、私と俊介(息子)は?」と山下さんに向き直りました。
山下さんは妻と息子を父と養子縁組させましたが、それはあくまで節税対策としてであり、相続分は自分と妹とで2分の1ずつ分け合うつもりでした。特にそのことを妻には説明していませんでしたが、それが山下さんの犯した大きな失敗の1つでした。
妻はわざわざ養子縁組までしたのだから、当然自分と息子にも財産分与があるものだと考えていたようです。この認識の相違から、以後言い争うことが増え、夫婦仲が険悪になってしまいました。