突然の父の死、妹の疑心暗鬼、そして離婚…

夕食時の一件以来、山下さん夫婦はケンカが絶えなくなりました。そんな夫婦の様子に父は心を病み、寝込むようになってしまいます。そして、そのままあっという間に亡くなってしまいました。

父の死後、山下さんは2つ目の大きな失敗に気付きます。山下さんは自分のためだけでなく、妹の相続税を節税するためにも今回の養子縁組を実施しましたが、その事実を妹には一切伝えていなかったのです。そのため、妹は相続発生後に父の戸籍を見て、“兄嫁”と“おい”が養子になっている事実を初めて知り、自分の知らないところで勝手に養子縁組が行われていたことに激しく憤りました。さらに、相続税を安くするという名目で実は妹の取り分を少なくする算段だったのではないかと疑われ、話し合いが紛糾してしまうことになりました。

想定外の事態はさらに続きます。そんな家族間のごたごたに愛想を尽かした妻が、ついに離婚を切り出してきたのです。山下さんも、既に冷え切った夫婦仲や父の死後整理の疲れから引き留める気力もなく、あっさりと離婚が成立してしまいました。

父の相続人は誰?

父は遺言を書くことなく相続を迎えたため、父の財産を誰が相続するかは相続人の間の話し合いで決定することになります。山下さんは妻と離婚したので、自身と息子(父の養子)、妹の3人で遺産分割協議を進めていきました。当初、山下さんは自身と妹とで2分の1ずつを分け合う考えでしたが、結果的に相続を放棄し、妹と息子が2分の1ずつの取り分となる形で最終決着となりました。

ところが、協議も無事に終わって預金などの名義変更を進めている段階で問題が発生します。