大きなお金が動く相続は、正しい知識を持っていないと思わぬトラブルになってしまうことがあります。今回は「生命保険金」の受取人の選択を誤ったために、骨肉の相続争いに発展してしまった80代男性の失敗事例を紹介します。

「自分が母親代わりに…」妹を干渉した兄

佐々木洋二さん(仮名、52歳)は、2年前に経験した妹との相続争いを「地獄のようだった」と振り返ります。心身ともに疲れ果て、それまでは定期的にあった妹家族との交流も今では完全に途絶えているそう。「今後も二度と会うつもりも話すつもりもない」と断じる佐々木さんに、一体何が起こったのでしょうか。

佐々木さんは妻と大学生の娘、そして80代の父親と4人で暮らしていました。母親は佐々木さんが20歳の時に病気で亡くなっています。就職後も佐々木さんは実家を出ることなく、結婚して娘が生まれてからもずっと実家で父親と一緒に生活していました。

一方、3歳年下の妹は高校を卒業するとすぐに実家を出ました。父親は仕事で家を空けることが多く、母親が亡くなって以来、妹を心配するあまり佐々木さんが何かと口うるさく干渉するようになったことが原因だったようです。

「たしかに年頃の女の子にとって、生活のいちいちに口出ししてくる兄なんてうっとうしかったのでしょう。親でもないのに、とも思っていたかもしれません。でも、あの頃は自分が母親代わりにならなきゃって、どうしてかとても気負っていたんですよ」

母親が大好きだった妹は、亡くなってしまったショックでしばらく魂が抜けたようになり、それまで学年でトップクラスだった成績も急激に下降したそうです。そして、やがて学校にもあまり行かなくなり、佐々木さんから見ると「よからぬ友人」と頻繁につるむようになったといいます。