鈴木さんには、教育資金一括贈与をする前には4500万円の預金がありました。これを基にインターネット情報を見ながら計算してみることにしたところ、相続税には基礎控除と呼ばれる非課税の枠があることを知ります。
基礎控除=3000万円+(600万円×法定相続人の数)
鈴木さんが先に亡くなることを想定すると、鈴木さんの相続人は妻と息子の2人です。つまり、基礎控除は4200万円(3000万円+600万円×2人)になります。相続税を計算すると以下のようになりました。
4500万円-4200万円=300万円
300万円÷2=150万円
150万円×10%=15万円
15万円×2人=30万円
鈴木さんの場合、納めるべき相続税は合計で30万円になりました。「えっ、たった30万円?」と、鈴木さんは思わず拍子抜けしてしまいました。
さらに、鈴木さんは預金のうち1500万円を教育資金一括贈与しているため、実際の財産は3000万円です。すると、そもそも相続税はかからないことが分かりました。
結果として教育資金一括贈与をしたことが節税対策にはなりましたが、鈴木さんは何だかモヤモヤと得心のいかぬ思いがしました。
相続税が30万円しかかからないのであれば、十分に払うことができる金額であったし、仮に基礎控除を引いた課税分の300万円を生活費として使ってしまえば、そもそも相続税はかからなかった。それにインターネット情報を見る限り、配偶者が相続した場合は少なくとも1億6千万円までは非課税になるとのこと。預金全額を妻が相続していたら、これまた相続税はかからなかった――。
鈴木さんは、どうやら自分は何も知らないまま性急に事を進めてしまったのだと気付いたのです。