前回(認知症になった親の預金は下ろせない… “親のお金”をモメずに受け継ぐ切り札「家族信託」)、40歳代から60歳代のミドル世代が中心となって、家族の財産を守り継承していく戦略を立てるべき必要性とその理由について解説しました。
しかし、一口にミドル世代といっても、40歳代から60歳代前半までと期間は長く、関わり方、役割、準備すべきことは年齢により異なる部分もあります。
今回は特に「50歳代」に焦点を当て、50歳代の方々に知っておいていただきたい戦略作りの考え方と方法を具体的に解説したいと思います。
50歳代は親の財産管理と相続への備えを具体的に考えていく年代
ある金融機関の相続に関するアンケート調査によると、50歳代の人で、片親の相続を経験した人の割合は全体の約40%、さらに両親とも存命している人の割合が約30%なのだそうです。つまり50歳代の約70%の人が親の相続を意識しながら、親の財産管理に関わっていくことと考えられます。
50歳代の親となると、現在の平均寿命に近い年齢に近づいている方も多いでしょう(簡易生命表によれば、男性が81.47歳、女性が87.57歳)。平均寿命に近づくにつれて、認知症の有病率も高くなるという厚生労働省のデータもあります(認知症の有病率は、80~84歳の年齢帯では男性が16.8%、85~89歳の年齢帯では女性が43.9%)。
全ての人が認知症になるわけではないものの、その兆しが生じると一気に症状が進んでしまうケースもあります。だからこそ、高齢になった親を持つ50歳代は、親の財産管理について、事前の対策が必要なのです。
法律でも、判断能力を有しない人の契約は無効(民法第3条の2)とされているように、親本人の判断能力が著しく低下してしまうと、所有する財産について手続きができなくなります。預金の引き出し、株式や投資信託の売買、不動産の売買、建物の建築や修繕、財産に関する新たな契約など……一切の手続きができなくなってしまうのです。