親が「支援してほしい」という気にならないと始まらない

ただ、子が財産の手続きができなくなることを心配して、準備を始めたいと思っても、財産を所有する親が“その気”にならないと何も始まらない――ここに難しさがあります。

筆者は、前回お伝えした通り、高齢の方々の「家族信託」の組成の支援を行っていますが、最初の面談では、家族信託を利用しようと思ったきっかけをほぼ必ず質問するようにしています。

すると、多くの回答は「配偶者が亡くなり、相続した財産の管理が心配になった」、「(病気によって)入院しなければならなくなった」、「施設に入所することを考え始めた」、「知り合いが認知症になってしまった」といった内容です。つまり、親自身も身近な人の認知症や施設への入所を聞けば、そう遠くない将来同じようなことが自分にも起きるのではと不安を覚えるのです。

しかし、だからいって子から突然「認知症になったら困るから、その対策を考えよう」などと言われるのは、親としても気分がよいものではないでしょう。このあたりの親と子のコミュニケーションは非常に難しいものですが、親も子にはなるべく迷惑をかけたくはないという思いがあり、「お互いが困らないようにしたい」という根底にある目的は親子共通のはず。まずは親子で少しずつそのような話題について話し始めていくのがよいのでしょう。

50歳代は、まさにこのようなことを具体的に始めていくべき時期にきているのです。こうして、「お金(財産)やこの先のこと」の話ができるようになって初めて、スタート地点に立ったと言えるでしょう。