親が豊かな人生を送るためにも、子が財産管理の戦略作りを

次に考えるべきは、親が亡くなるまで、親が豊かな人生を送れるようサポートすること。これは一朝一夕にできることではなく、相応の準備が必要です。

そして親の「豊かな人生」を実際に叶えていくには、親が所有する財産を有効に活用することが欠かせません。となると、親の財産を有効に活用できるよう、年齢を重ねることで財産管理が難しくなる親を子が支援する体制作りに向け、子が中心になって財産の戦略を考えていきます。

戦略作りに必要なのは親の「思い」と「事実」

戦略作りには、何よりもまず親子で情報を共有することが必要です。

その共有すべき情報とは、親の「思い」と「事実」です。子は親から「思い」と「事実」の情報を共有してもらえるよう、親とコミュニケーションを重ねていきます。そして、共有できた情報について、子は「思い」と「事実」を区分して記録し、それを整理するとよいでしょう。

親が今後どのようなことを実現したいのか、その「思い」を把握していきます。楽しみ、家族との生活、生活の場など……親が実現したい思いを開示してもらえるよう親とのコミュニケーションを図ります。まずは楽しいことや豊かなイメージを親子で共有できるとよいでしょう。

そしてその楽しいことを実現するために、親の財産をどのように活用するのか、その戦略を子が考えていかなければなりません。戦略作りの第一歩として、親の財産に関する「事実」の把握が不可欠です。預貯金、株式や投資信託などの金融商品、生命保険契約、不動産など財産の現状(何が、どこに、いくらくらいあるのかなど)について、親から情報を共有してもらえるようコミュニケーションを図ります。

筆者の経験から言いますと、片親の相続を経験した人は、親の財産状況を把握している方が多いように思います。両親が健在の場合には、親も自身の財産のことを子に伝えることを控えている方も多く、親の財産状況を把握していない方が多いようです。まだ親の財産状況を把握していないときには、親が実現したい思いを叶えるために、どの位の金額が必要なのかを親子で計算してみるといったことなど、コミュニケーションの方法を工夫してみるとよいでしょう。

話してもらいやすいコミュニケーションの取り方は人によって異なりますが、親になるべく多くの情報を共有してもらえるような関わり方を子側が考えることも必要です。