前回(いきなり「財産いくら?」はNG…親とモメずに財産の話をするための4カ条)、家族の財産を守り継承していく40~60歳代のミドル世代が、親に財産の情報開示を求めるときの工夫について解説しました。

今回は親の遺言について解説をしたいと思います。遺言を作成した方がよいのはどのような場合か。もし遺言を作成するなら、どう進めていくか。なかなか難しい親子でのコミュニケーションのきっかけづくりについても解説していきます。

遺言がないと何が問題?

遺言の必要性を語る前に、まずは民法とあわせて相続の定義を振り返ります。

相続とは被相続人の死亡によって開始するものです(民法882条)。被相続人(亡くなった方)の配偶者は常に相続人になり(民法890条)、子がいれば子も相続人になります(民法887条)。

相続人になれば、相続開始の時から被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法896条)。その承継には、被相続人の一身に専属したもの(※)を除き、金融資産や不動産などの「プラスの相続財産」と一緒に、借金などの「マイナスの相続財産」も含まれます。特に借金は、相続開始と同時に法定相続分に従って各相続人に承継されるため、要注意です。

※被相続人である本人でなければ成立しない、もしくは認められるべきでない権利や義務などのこと

相続人が複数いる場合、プラスの相続財産は相続人の共有になります(民法898条)。そして、被相続人は遺言で共同相続人の相続分を定めることが可能です(民法902条)。

共有となったプラスの相続財産は、相続人同士が話し合って分け方を決めてなければなりません。この手続きを「遺産分割」と言います。相続人同士の意見が一致しないと遺産分割が決まらないため、財産は共有のままとなり、財産の処分ができません。

上記をふまえると、親が亡くなったときに遺言がないことの問題は、プラスの相続財産が共有になり、そこに不便さが生じることだと筆者は感じています。