私たちが一番気になっていたのは、妻が増収を図る際にぶち当たるパートの「106万円の壁」の問題でした。稲垣さんの試算結果も私たちが把握している数字と変わりませんでしたが、さすがプロだと感じたのは、稲垣さんが妻の何気ないこんな言葉に反応したことです。
「道の駅でカフェを営業している友人からも『人手が足りないので、土日だけでも手伝ってくれない?』と言われているんですけれど、要は、労働時間を増やしても“働き損”になるだけなんですよね?」
その時に稲垣さんが指摘したのは、スーパーのパートは現状のペースをキープし、新たに道の駅のカフェで週末だけ働いた場合、今より年収が増えたとしても合計が130万円未満であれば社会保険に加入する必要はないということでした。「106万円の壁」の社会保険の加入条件は、1社単体で適用されるものだからだそうです。ならば、例えば毎週日曜に6時間程度カフェで働けば、月2万円の増収が可能になります。私たちにとってはまさに目からウロコでした。しかし、稲垣さんは同時にこうくぎを刺すのも忘れませんでした。
「誤解しないでいただきたいのは、奥さまが社会保険に加入するのは決して悪いことではないということです。例えば、厚生年金保険に加入することで、将来は加入期間に応じた年金額が上乗せされます。仮に奥さまが50歳から60歳まで年収200万円程度を得ながら働いたとしたら、65歳から受け取る年金額は10万円ほど増えます。たったの10万円と思うかもしれませんが、女性の平均寿命は約88歳ですから、そこまで生きればトータルで240万円も多くもらえるんですよ! 奥さまのように年収を103万円以内にセーブしていた方の場合、確かに増収すると一定のラインまでは働き損になってしまいます。しかし、そのラインを超えれば、手取り収入もしっかり増えていくんです」