個人投資家でも実践できる高度な分散投資とは?

これはとても難しい問題ですので、正解は1つではないのでしょう。ただ、機関投資家の例をみてみると、その多くが株式と債券という資産運用における中核から一歩外に踏み出して、「オルタナティブ投資」を検討・活用し始めています。

もっとも、個人投資家にとってオルタナティブ投資は、心理的にも知識的にもハードルが高いかもしれません。だとすると、やれることはまず、株式投資の中身を見直してみることだと思います。例えば、今のようにインフレが高まる局面では、テクノロジー関連の株式は苦戦する傾向がありますから、インフレ感応度の高いエネルギー関連の株式だったり、不動産関連の株式だったりにシフトすることも一案です。

また、シンプルにリスクを下げるために、低ボラティリティ株式などを活用してもいいかもしれません。ただ、これらは株式の中での分散投資にすぎませんから、そこまで大きなリスク低減効果は期待できないでしょう。

そこで次に選択肢となってくるのが、やはりオルタナティブ投資なのです。オルタナティブ投資というとなんだか難しい気がしますが、欧州のコンサルティング企業Capgeminiが毎年まとめている「Financial Service World Reports 2022」によると、海外の富裕層はすでにオルタナティブ投資に14%も投資しています。ですから、個人投資家だからと言って、できないことはないはずです(ちなみに、日本の富裕層はその約半分の8%程度)。

オルタナティブ投資と一口に言っても、大きく2種類に分けられます。1つは投資対象が株式や債券とは異なる商品、もう1つは、投資対象は株式や債券であるものの、その投資手法が通常と異なる商品になります。前者の代表的なものは未上場株式(プライベート・エクイティ)や不動産への直接投資、金地金などであり、後者の代表的なものはヘッジファンドになります。

前者の未上場株式や不動産への直接投資はリターンが高く、株式や債券との相関も低いのですが、一度投資をすると途中でやめるのがとても難しいため、相当の覚悟が必要かもしれません。その点、後者のヘッジファンドのほうが次の一手としては活用しやすいでしょう。

最近は一般的な投資信託と同様に、日々売買ができるような商品も出ていますので、投資信託の延長線上として活用できると思います。株式や債券だけでは十分な分散投資ができなくなっている今、このようなオルタナティブ投資を投資先の候補として考えてみてもいいのかもしれません。