相関がプラスになることがポートフォリオに与える影響

しかし、実はそのような状況だったのは2000年以降“だけ“です。“今まで“の定義をもっと広げて、それ以前をみてみると、多くの局面において株式と債券の相関はプラスなのです。

以下のグラフでは英国が1763年、米国が1891年からの株式と債券の相関を示していますが、多くの期間で相関は正になっているのが確認できると思います。つまり、株式と債券の相関がプラスの状態が通常であり、むしろ2000年以降のマイナス相関が異常な状態にあるとも言えるわけです。

しかも、過去の株式と債券の相関とインフレとの関係性をみると、インフレが相応の水準にある時には、株式と債券の相関が正になる傾向がみられます。足元、インフレはかなり高水準ですが、今後も相応のインフレ水準が続くと想定するならば、相関がプラスの状態が続くと想定されます。

相関がマイナスからプラスに変わると聞いても、ピンとこない読者がほとんどかもしれませんが、これはポートフォリオ全体に大きな影響があるのです。

ここで、株式60%/債券40%のポートフォリオについて考えてみます。2000年以降、株式と債券の相関がマイナスになったことで分散効果がしっかり機能し、このポートフォリオのリスク水準は徐々に下がっていました。

ここで相関がプラスになったと仮定してリスクを計算し直してみると、分散効果が弱くなるため、このポートフォリオのリスク水準は上昇します。われわれの分析では、株式60%/債券40%のポートフォリオのリスクが1~2%程度上昇する可能性があるとみています。

足元は市場が混乱しており、ただでさえリスクを下げたいと思っている人が多いでしょうが、今は何もせずに放置してしまうと、リスクは下がるどころか上がってしまうのです。ですから、世界中の投資家が今、分散効果を高めてリスクを下げることに躍起になっています。

では、リスクを下げるにはどうしたらよいのでしょうか?