“あえて”積立投資には「機会コスト」が発生

これまで過去20年以上にわたるデータを用いて、積立投資と一括投資の優位性を議論してきました。投資期間が5年ならば積立投資も選択肢としてあり得ますが、10年ならば一括投資のほうが圧倒的に合理的な投資行動である点が示されました。

とは言え、人間は合理性だけで動くことはありません。特に投資初心者であれば、投資に対して損失回避傾向が強く、なんとしてでも元本割れを回避したいとの気持ちが強い人もいるでしょう。そのような投資家は、その気持ちを無視して一括投資をする必要はありません。

ただ、その気持ちに沿うためには「コスト」が生じていることを、ご理解いただきたいと思います。ちなみに、ここで言う「コスト」は、“あえて”積立投資をすることで、かなりのアップサイドをあきらめることを意味しています(機会コスト)。アドバイザーの方々は、単に“あえて”積立投資を勧めるだけでなく、この機会コストについても投資家に説明すべきだと思います。

さらに言えば、これから先に“あえて”積立投資をする場合、そのコストはもっと高くなる可能性があります。なぜならば、預金金利はほぼ0であるにもかかわらず、インフレが相応の水準に達しているからです。“あえて”積立投資をする場合、投資に回らない資金は預金にとどまっているでしょうから、この部分の実質的なリターンは、インフレ時にはマイナスになってしまいます。

このようなコストを踏まえても“あえて”積立投資のほうが安心というのであれば否定はしませんが、個人的には、十分な資金を持っているにもかかわらず、“あえて”積立投資をする必要性は全くないと考えます。仮に積立をするにしても、長期の積立ではなく、短期(例えば3カ月や半年)で分割して投資をするほうが、機会コストも少なく、スマートな投資方法だと思います。

これから積立投資を検討する方は、ぜひこのコストについても考慮してみてください。